
第四資料室報告書 No.01「三つの由来」は、高良山に残る三種の記録を整理した初の公開案件である。
江戸期の地誌写本、明治期の社務記録、そして山麓に暮らす高齢者三名の口承。成立年代も目的も異なるこれらの資料は、互いに直接の関連を持たない。しかし地図上に落とすと、三者は一点で重なる。
そこは「旧祭場」と記され、「内を避ける」と記録され、「戻る場所」と語られた地点である。名称も意味も揃わない。ただ位置だけが揃う。
現地踏査では特異な物理現象は確認されなかった。温度、磁気、視認性、いずれも正常範囲内である。地形も自然の説明に収まる。にもかかわらず、過去の登山道、古い踏み跡、祭礼の順路変更は、いずれも同一点を境に折れている。
さらに帰所後の照合において、踏査ログと地形図に不整合が生じた。現地で確認されなかった分岐が地図上に存在し、記録時刻には三十分の差異が残る。
偶然か、記憶の補正か、それとも座標の揺らぎか。

本報告書は由来の真偽を確定しない。ただ、三つの記録が一点で交差する事実のみを整理し、焼却候補から保管区画へ移された判断の経緯を含め記録したものである。
由来は三つ。指す場所は一つ。
意味だけが、空白のまま残されている。
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