歴史研究会 【考察】出雲国譲り神話は何を語るのか
出雲国譲り神話とは何か。
一般には、出雲の神である大国主神が治めていた国を、天照大御神の側へ譲る神話として理解されている。神社本庁の説明でも、国譲りは「大国主神が治めてきた豊葦原水穂国が天照大御神の御子に譲られる経緯」を語るものとされる。
しかし、この神話をそのまま「出雲支配の説明」と見ると、どうしても不自然な点が残る。
最大の問題は、国を譲らせる舞台が出雲であるにもかかわらず、天孫降臨の舞台が日向に置かれていることである。もし主題が「出雲を征服し、その地を直接支配した」という物語であるなら、天孫はそのまま出雲に降ってよいはずである。ところが神話はそうは構成されていない。ここから見えてくるのは、国譲りの意味が出雲という土地の取得そのものにはなく、むしろ新しい王権が地上支配の正統性を得るために、どこかの高位の旧秩序から承認を受ける必要があった、という点である。すなわち、国譲りは領土獲得譚ではなく、正統性付与の儀礼的神話として読むべきなのである。