第四資料室 第四資料室報告書第3号「摩尼山の影」
テレビニュースで隠岐・摩尼山の行方不明事件を知った〈ぼく〉は、第四資料室の廃棄棚に同じ地名の報告書が眠っていたことを思い出す。件名は「居住地未確認事案」。住所も地図も鍵も一致しているのに、本人だけが自宅へ辿り着けず、やがて再び失踪した記録だった。最後のページには「家を見つけた者は、必ず山へ戻る。」という不穏な一文が残されている。さらに当時の担当者から連絡が入り、対象者が目の前で消えたこと、そして今回の事件が“十五年前の再発”かもしれないことが示される。現地へ赴いた〈ぼく〉は、発見地点が後醍醐天皇の御所跡と重なること、失踪者が「やっと帰れる」と語っていたこと、そして十五年前と同じ午後三時四十分に山影の中へ人影が沈むのを目撃する。焼却ではなく保存を選んだ報告書に、〈ぼく〉は最後に一行だけ追記する。
「鍵は閉められている。」